中古マンションをリノベーションする際は注意が必要!アスベストを見つけたときの工事方法を解説
「アスベスト」という素材についてご存じでしょうか?
かつて使用が禁止された際、大きく報道されて話題となったため、記憶に残っている方もいるでしょう。
現在では全面的に使用が禁止されていますが、古いマンションにはアスベストを含む建材が使われている可能性があります。
今回は、アスベストの基本情報から、リノベーション中に発見された際の対処法について詳しく解説します。
築年数の古いマンションにお住まいの方や中古マンション購入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
アスベストとは?
アスベストとは、繊維状のケイ酸塩鉱物の総称で、石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれています。
耐熱性・耐摩耗性・耐薬品性・耐腐食性に優れ、繊維状で引っ張りにも強い特性があり、非常に丈夫な素材です。
そのため、かつては保温材や耐熱建材として広く使用されていました。
しかし、アスベストの繊維は非常に細かく軽いため、切断や解体作業中に空中へ飛散しやすく、作業者などが吸い込んでしまうリスクがあります。
大量に吸い込むと、肺に蓄積されて20年以上の潜伏期間を経て肺がんや肺線維症といった重篤な病気を引き起こす可能性があります。
【アスベストが含まれていた可能性がある建材】
・化粧用内装材
・外装・屋根材
・断熱材
・結露防止材
・吸音材
・耐火皮膜
・システムバスの浴槽
・吹き付け材
使用禁止になるまでの変遷
西暦 | 変更内容 |
1975年 | 「特定化学物質等障害予防規則」の改正により、アスベスト含有率が5%を超える材料の使用が禁止される |
1986年 | ILO(国際労働機関)が「石綿条約(第162号)」を制定し、アスベストの管理、使用、吹き付け作業の禁止を指導 |
1995年 | 「労働安全衛生法施行令」が改正され、アスベスト含有量が重量の1%を超える材料の吹き付け作業が禁止される |
1997年 | 「大気汚染防止法」が改正され、吹き付けアスベストを使用している建物の解体が「特定粉じん排出作業」に指定され、厳重に管理されるようになる |
2004年 | 「労働安全衛生法施行令」が改正され、アスベスト含有量が1%を超える建材・摩擦材・接着剤など10品目の製造・輸入・使用が禁止される |
2006年 | 「労働安全衛生法施行令」の改正により、アスベスト含有量が0.1%を超えるすべての製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止され、全面禁止となる |
2012年 | 厚生労働省が「アスベスト含有建材使用建物の改修工事等における石綿の飛散防止対策ガイドライン」を発表し、改修工事における飛散防止対策が強化される |
2020年 | 「建築物における石綿の飛散防止対策の推進に関する法律」(石綿飛散防止法)が施行され、すべての解体工事においてアスベスト調査の義務化が導入される |
1995年以降に建築された建物にはアスベストが使われていない?
1995年の労働安全衛生法施行令の大幅な改正を機に、アスベストの使用が急速に減少していきました。
しかし、建築物へのアスベスト使用が法的に全面禁止されたのは2006年です。
そのため、1995年以降に建てられた建物であっても、微量ながらアスベストを含む建材が使われている可能性があります。
また、築40年以上のマンションであれば、多少なりともアスベストが使用されていると考えて良いでしょう。
中古物件を購入する際は、アスベストの除去工事が行われたか、修繕の履歴を確認してください。
アスベストが含まれているか判断する方法
2006年以前に建築された物件では、アスベストを含む材料が使用されている可能性が高いですが、築年数だけで判断するのは難しいです。
新築当時の設計図や仕様書から使用された材料や製造年を確認し、アスベストの有無を推測する必要があります。
さらに確実な情報が必要な場合や詳細な確認を行いたい場合は、専門業者に調査の依頼をすると良いでしょう。
アスベスト調査の流れ
2014年に「建築物石綿含有建材調査者」の資格が新設されたため、資格保有者のみがアスベストの調査を行うことができます。
アスベスト調査の主な流れは次のとおりです。
書面調査
建物の着工日や使用された建材について、設計図や仕様書を確認し情報を収集します。
目視調査
建材の商品名、メーカー名、ロット番号などを確認し、アスベストデータベースで照合します。
成分分析
書面や目視で確認できない場合、建材を採取し分析機関へ成分検査を依頼し、アスベスト含有を判定します。
アスベストが見つかった場合の適切な処理
万が一アスベストが見つかった場合は、適切な処理を行うことが重要です。
アスベスト建材には異なるレベルがあり、飛散のリスクに基づいて以下のように定義されています。
レベル1建材 | 最も飛散しやすく、危険度が高い素材 |
レベル2建材 | 飛散リスクが低いですが、アスベストの密度が低く、軽量なものが多いため、崩れた際には大量に飛散する恐れがある |
レベル3建材 | 建材に練り込まれて固定されているため、比較的飛散しにくい |
レベル1・2の建材は主に工場や大型ビルで使用され、一般住宅ではレベル3の建材がほとんどです。
除去方法は危険レベルによって異なり、レベル1の建材は特に慎重に扱う必要があります。
一方、レベル3建材は固まっているためリスクは最も低いですが、切断時に空気中に飛散する可能性があるため注意が必要です。
アスベスト除去方法
アスベストの除去は、環境省が公開している「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」に従って慎重に行う必要があります。
まず、作業前にアスベストの種類とレベルを確認し、適切な除去計画を策定します。
作業区域は厳重に封鎖し、周囲に対する飛散を防ぐために、防護服やマスクを着用し、必要な安全対策を講じましょう。
そして、除去作業は湿潤状態で行うことが推奨されており、アスベストが飛散しないように適切な手法で解体します。
解体したアスベストは、密閉された袋に入れ、指定された処理施設に運搬します。
運搬時も飛散を防ぐために、封印やシールを施し、運搬中の振動を最小限に抑えることが重要です。
作業終了後は、環境を清掃し、残留アスベストの有無を確認するために、専門業者による再調査を行うことが求められます。
アスベストの調査や除去工事には補助金が適用されるケースもある
民間のマンションなどに対するアスベスト調査では、国の補助金を活用することが可能です。
さらに、一部の自治体ではアスベストの除去作業も補助対象となるケースがあります。
対象建築物 | 吹付けアスベスト等が施工されている可能性のある住宅・建築物 |
対象建材 | 吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライト等 |
補助金の対象 | アスベスト含有調査に要した費用 |
補助金額 | 原則25万円 |
申請窓口は各都道府県に設けられています。
詳しい情報については、各担当部署に直接問い合わせてみてください。
まとめ
現在、アスベストの使用や施工は法律で完全に禁止されているため、見つかった場合は大きな問題だと感じるかもしれません。
しかし、正しい処理を行えば、その後も安心して暮らすことができます。
アスベストについて心配や不安を抱えている方は、専門の資格を保有する業者に調査を依頼して確認してください。
そして、アスベストを含んだ建材が確認された場合は、新しい建材に変えるようにリノベーションを行いましょう。